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パチッ⑤
『大学時代、このバンドを結成した当初から僕らメンバーが一番好きだった曲であり、インディーズ時代本当に多くの方に評価していただいていた楽曲“〇〇”は、メンバー総員との協議の結果、このアルバムには収録せず、今後はライブでも発信しない方向性ですすめていくことになりました。
自分で言うのもなんですが、“〇〇”は僕らの最高傑作なのです。文化祭ステージや学校同士の定期演奏会で有名な曲をコピーして演奏していたふつうの部活バンドだった僕たちが、はじめて自分達で作った曲です。人に聴いてもらうためではなく、ただ自分たちが音楽が大好きで、やりたいから書いた曲です。だから正直、ビートも歌詞もめちゃくちゃで、あまりに稚拙すぎて。これから、オーディエンスに届けるための楽曲を書くことを求められていく立場になるうえで、決別しないといけない曲であり、それでいて一番大切にしないといけない曲です。僕たちは音楽が好きです。この気持ちを忘れないために、初心であるこの曲は僕たちの宝物としてしまっておくことに決めました。僕たちのロックンロールがビジネスに搾取されそうになってしまったら、僕らはこっそり3人だけでこの曲をやってます。舵であり、エンジンであり、コンパスであるこの曲からこのバンドが始まったことを、僕たちとほんの一部の方たちだけがずっと忘れてないってことに、いますごくワクワクしています』一番評価していた……いや、そんな高尚なもんじゃなくて、大好きで、大好きで、本当に好きだった。うまくはないのにあの曲だけどうしても俺の心をぐちゃぐちゃに揺さぶったのは、君たちも同じ気持ちだったからなんだな。自分含め、いまやこの世で数人しか一生聴けなくなってしまった曲をもう一度聴きたくて、ROMを再生機に入れた。…「パチッ」音楽が流れ始めた。 -
Syndrome
愛と恋と執着と未練の区別がつかないので、まだまだクソガキなんです。甘やかしてね -
ラスト枠のみ!
事前ご予約たくさんありがとうございます💐
おかげさまで、本日残り枠僅かです!
お店にお問い合わせお願いします🙇 -
パチッ④
「パチッ」
どれだけスマホ一台で世界中のすべての音楽を楽しめるようになろうが、俺は必ずCDを買うことを信念にしている。PCからスマホに書き込んで、ディスクをしまってアクリルケースを閉じる。一角だけ不自然に空っぽになった本棚の右上にそっと大事に立てかけた。音楽を捨てたとき、高校で軽音をはじめた時から集めていたCDもEPも全部売り飛ばした。二束三文にもならなくて、やっぱり音楽なんて馬鹿馬鹿しいと改めて思った。あの地下ステージの対バンから4年、俺はあの日のライブ終わりの気持ちをもう思い出したくなくて、二度と現場には行っていなかった。だがついに、中堅のレーベルから声がかかり晴れて悲願だった夢のメジャーデビューを果たした彼らは、インディーズ時代の楽曲を含めた一枚目のフルアルバムをリリースするに至った。40日ほど前に発売告知の報せを例のドラムから受け取って、朝から飛び起きてCD屋に行くと確かに検索端末にヒットするようになっていた。何も考えることなく、無心で予約して帰宅した。アルバムが届いた。キマったジャケットに嫉妬する。こんなときに限ってなかなか剥がれてくれない外装フィルムがもどかしい。読み込みを待ちながら収録曲をざっと見てみると、あのときもらったデモのROMには入っていなかった曲がかなり増えている。ぼーっと天井を見上げながら一曲一曲再生してみる。全曲再生完了して、また部屋に沈黙が帰ってきた。……おかしい。収録されていないのだ。流れてこないのだ。期待していた、あの曲が。あのとき俺が涙までしたあの最高の曲が。メジャーデビュー目指すなら、あの曲を売り出すことは不可欠と思わされるほどよくできた歌だった。どうして、俺は、手がかりが欲しくて歌詞カードを隅々まで探した。すると、裏表紙をめくった最後のページに、ギターボーカルのコメントが載っていた。 -
お風呂に入れる用👹
後ろの鬼ころしはお風呂に入れる用👹
最近ツイてないな〜みたいなとき、鬼ころしと塩入れて入ってる🛁
べつにスピリチュアル的なのではなくて、気持ちの切り替えとして一旦霊的なもののせいにして責任押し付けてあげれば次の日からスッキリがんばれる、気がする😊 -
パチッ③
「パチッ」
何年もやめていたタバコに火をつけた。一口吸ってみたがいまいちだった。灰皿なんて処分してしまっていたのでシンクで適当に水を浴びせて、箱ごと捨てた。部屋の隅で棒立ちになっているギターを抱えてみる。おまえ、成長してないか?4年間目を背け続けてきたそのボディは、毎日弾いていたあの頃よりも、何倍も重くなっている気がした。夢ってな、叶わないんだよ。気持ちだけじゃ。祈りだけじゃ。小手先だけじゃ。それでも俺がこいつを手放せないのは、……「あああああああっっ!!!!!」俺はチューニングもせず、アンプにも繋がず、めっちゃくちゃなリズムであの頃仲間と弾いていたコピー曲を弾いた。何度も何度も弾いた。テンポは乱れていたが、勉強も単位もそっちのけで必死で叩き込んだコードだけは体が覚えているようで、運指だけは滞りなく淀みなくおさえられた。隣の部屋から壁を殴る音がする。うるさいよ、おれの丸サの邪魔をするな。ちっっっっっせえハコの対バンでも、自分でチケット売ってステージ立ててるバンド、すげえかっこいいよ。部室やスタジオで一度でも言えば良かった。「ライブハウス行こう」って。「失敗しても行こう」って。だけど飲み込んでたんだ。だってギター弾くのがこんなにも楽しい。みんなで弾いてたらあんなにも幸せで。下手くそだったのも恥ずかしくなかった。そのために練習してたんだ。だけど、仲間内だけじゃなく人前に出て、失敗して、ライブをだいなしにしたら、もう二度と同じ気持ちで楽器触れなくなる。それがすごく怖かった。誰にも見られたくない、4人の秘事だった。だってフェスで見られるデカいバンドやワンマン張れるバンドが失敗してるとこなんて、ただの合奏になってるとこなんて見たことなかったから、完璧じゃないとステージなんか立っちゃいけないと思ってた。今日のライブ、ほんと、なんだったんだよ。設備不良か音割れやハウリングはするし、歌詞は何度も飛んでコーラス担当のベースが助け舟出してるし、リーダーのギターボーカルは最後の自己紹介でしっかりポケットからカンペを出して棒読みで読み上げる始末。ひっくり返るくらいグダグダで、あんなんでも、ちゃんと感動させられてしまったんだ。もしかしたら、勇気さえあれば自分達だって……なんて買いかぶりかけて、制止した。俺等にはできなかった、きっと。俺は、一度捨てたタバコの箱をわざわざゴミ箱を漁って拾い上げ、深く、深く吸った。涙目になりながらむせ返って、そのまま泣いた。隣家からの壁ドンも、いつの間にか止んでいた。 -
パチッ②
「パチッ」
チケットに穴が開けられた。負の光走性をもつ今日の僕は、粗末な雑居ビルのさらに地下におりていく。一段、一段、おりていくごとに街の光が届かなくなっていく。所々剥がれたきったねえカーペットで作られた区画。疎らに集まった若者たちに交じれるはずもなく、ドリンクチケットでもらった実質500ml600円の水に遠慮がちに口をつけた。ほの暗いフロアがまた一段光を落とすと、ゲラゲラ笑っていた集団も押し黙ってステージの前に整列する。「パチッ」オーディオの電源が一斉に入る音。2,3音の試奏ののち、何億回も聴いたあのフレーズが響きわたって、光から逃げたいぼくらも、ライブハウスでだけは生きていていいんだって思える。ギラギラ瞬くライトも、ぐわんぐわん攻撃してくる爆音も、心の底から求めてる。触れたくて手を伸ばしたいとすら思える。セトリのトップは、一番俺の好みだった歌だった。以心伝心、している気がした。フロアのうちの何割かが。数にすれば数人でも、絶対的なバンドの味方が、ファンが、一対一を感じていただろう。 -
うまくいった日
今日前髪めっちゃきれいにセットできてる!!(湿気とプレイの熱気とMttですぐぐちゃぐちゃなるので、到着していちばん最初に撮った記念動画です) -
低気圧☔
天気悪いと頭痛くなるよね😭😭
偏頭痛のたびにロキソニンで耐えてたんだけど耐性ついちゃいそうだし胃にも悪いから、最近は漢方の五苓散を処方してもらってるよ💊
お足元悪い中でご予約ありがとうございます。楽しいお時間にしましょうね -
パチッ ①
「パチッ」
命が消える音がした。疎らに立った街灯に、蛾が、蝿が、光を求めて飛び込んだ者たちが。正の光走性をもつぼくらは、毎日、毎日、毎日、14時間おきに太陽が見えなくなると、どこにもいけなくなってあたたかい光に引き寄せられてしまう。ドアを開けたらややオレンジみがかった空間が出迎えてくれて、テーブルの上では少し冷めたビーフシチューが待っていて。大事な人がおかえりって言ってくれる。……なんてのは幻想で、実際はひとりでクタクタになりながら無骨なデカい鍵で建て付け悪いドアを開けて、自分の指で「パチッ」て真っッッッ白のLEDを点けて、寒くて冷たい部屋で何も貼ってない真っッッッ白の壁を見つめながらペヤングに注ぐ湯を一口ガスコンロで沸かすだけ。不思議な魅力があった。決して歌はうまくなかった。音域も広くなかった。脳に響くゴツゴツした低音と、悔しさまで感じるシャリシャリの高音を器用に使い分ける今日日のシンガーが腐るほどいる令和に、ときに耳障りなほどにまったく飾らない、直球の歌声。だけどそいつが作ったその言葉は、広辞苑には載ってないその言葉は、英語に訳せる単語を持たないその言葉は、荒削りだけど美しいビートに乗って、耳介から飛び込み鼓膜を揺らし、脳幹に直接作用する。脊髄をわたって、叩けないバスドラのリズムを足先がコピーする。無意識の反射で。何度も何度も何度もリピートして、隠されたパンチラインやリリックがふと耳に留まって、これってもしかして俺しか気づいてない!?なんてうぬぼれて、シンガーとの秘密を共有している気分になりながら、だれかに知ってほしいvsだれにも取られたくないを反復横とび。そんなROMが手に入ったのは、自分の大学時代の軽音サークルの後輩がなかなかいい線いってると、かつて組んでいたバンドのドラムのやつからの縁だった。本気でメジャーデビュー目指してるらしく、小規模ながら地下でライブも打ってるらしい。
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