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8月27日
旅行の思い出、その3✍️
昨日お話しした老舗洋食店の専務さん――この方からいただいた言葉が、私の人生を大きく変えてくれました。
ある日、専務さんとご飯をご一緒したときのこと。
量が多かったのか、それとも私のお腹があまり空いていなかったのかは覚えていません。
ただ「全部食べきるのは難しいかも」と思いながら箸を進めていました。
小さい頃から「食べ物は残してはいけない」と親に教えられてきました。
作ってくれた人への感謝、そして命をいただいている食材への礼儀。
だから私は、どんなに苦しくても無理をして食べきることが当たり前だと思っていたのです。
そのとき、私の表情に気づいた専務さんが静かに言いました。
「ちょうどいいところでやめなさい」
その一言は、当時の私には衝撃でした。
親の教えは正しいものだと信じ込んでいましたし、それを疑ったこともなかったからです。
専務さんは続けてこうおっしゃいました。
「お腹いっぱいで気持ち悪くなると、“おいしい”と思った瞬間の記憶まで全部が“苦しい”に塗り替えられてしまう。
でも、ちょうどいいところでやめれば“おいしかった”という素敵な記憶で終われる。
無理をするよりも、その方が料理にもお店にも感謝できるんだよ」
その言葉に、私は心から納得しました。
確かに、頑張って食べなきゃと思ったせいで、楽しいはずの食事が苦しい思い出に変わってしまったこともありました。
でも専務さんは、作ってくれた人にも、食材にも、共に過ごす相手にも、最後は笑顔で「おいしかった、ごちそうさま」と伝えることが一番大切だと教えてくださったのです。
「ちょうどいいだけ」――
それ以来、私はその言葉をずっと大切にしています。
時には「なんで残すの?」「もったいないよ」と言われることもあります。
そんなときは「そうだね」と答えながらも、心の中にはいつも専務さんの言葉があります。
これ以上食べたら笑顔でお店を出られない。
だからこそ、満足と感謝の気持ちで終わりたいのです。
専務さん、お元気でしょうか。
今は役員名簿からお名前が消えてしまいましたが、きっと見えないところでお店を支えていらっしゃるのではないかなと信じています。
あのあと私は“専務”という名前の重みを知りました。
けれど、思い出すのはいつも、肩書きではなく…あの日の優しい声と、あのときの笑顔。
🐥「〇〇さん聞いてよ。私、頑張ったんだよ。
話したいけどちょっと長くなりそうだから、コーヒーか紅茶かココアを飲みながら聞いて」
👨「いいよ。コーヒーと紅茶とココア、どれがいいの?」
🐥「うーーーん、迷ったときはドリンクバー( •̀∀•́ )」
👨「いいよ。ところで、ドリンクバーにブラックコーヒーはある?」
🐥「😳😳😳 ‼︎‼︎!
行ったことないんかーーーい(笑)」
そんな何気ないやり取りや笑顔に励まされて、私は私らしく生きてきました。
だからこそ、いつかまたお会いできたなら――「私、ちゃんと頑張ってきたよ」と笑顔で伝えたいです。
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